じんましんは大人だけでなく子供にとってもつらい症状の病気です。
じんましんの原因を理解し治療だけでなく普段からの予防を実行しましょう。
じんましんという名前がついたのは、蕁麻(いらくさ・じんま)という植物の葉に触ると発疹とともにかゆみが起こることに似ていることからじんましんと呼ばれるようになりました。人口の2割近くの人が一度は経験すると言われていますが、慢性蕁麻疹はそれほどの数にはなりません。
じんましんの症状:
皮膚に熱をもった発疹が出てかゆみを感じます。じんましん発疹の特徴は膨疹という、みみずばれののような膨らみが出ることです。じんましんの症状は体のすべての部位に出ます。主に顔、胸、腹、大腿部の皮膚が多く、時には皮膚だけでなく粘膜、目の回り、口の中、気道の中に見られることもあります。じんましんが気管支に出て呼吸困難となったり、内臓じんましん、腸や肝臓に出て下痢を起こしたりすることもあり、風邪や他の原因による腹痛などと間違われることもがあります。アレルギーとは違う発熱、関節痛や、皮膚にも内出血を表す紫色の斑点などが見られる場合はじんましん以外の病気の反応の可能性があり、またじんましん症状といっても他の病気の初期症状と見分けがつかないこともあるので、皮膚科など病院での診察が必要です。発疹の大きさは2,3mmから手のひら大、形は様々で丸形から地図のような形まであります。
じんましんの分類:
アレルギー性じんましん、非アレルルギー性じんましん、遺伝性のじんましんに分けられます。遺伝性じんましんは別としてアレルギー性じんましんと非アレルギー性じんましんについては、さらに分類されます。
アレルギー性じんましんは、経過による区別で発疹が1か月以内か、1か月以上かで急性じんましんと慢性じんましんに区別され、原因による区別では食物性蕁麻疹と薬剤性蕁麻疹との分けられ、次のようなものがあります。
食物性・食事性じんましん。
アレルギー性じんましんの一つで、その食物そのものに対してアレルギー反応をもっている場合では、サバなどの青魚、卵、牛乳、大豆、肉、小麦粉とその加工品、そば、ナッツなどの食物の実、ジャガイモ、トマト、キャベツといった野菜や、リンゴなどの果物が原因となります。急性の食事性じんましんが、子どもに多いといわれています。
食物そのものに対してアレルギー反応はないが、じんましんを誘発する物質(仮性アレルゲン)が入っていて、消化器官で代謝された代謝産物に対してアレルギー反応を起こす場合があります。アレルギー反応だけでなく、何らかのプラスアルファの要因が加わってじんましんが生じる場合です。たとえば、アルコール飲料、スパイスなどです。また腸に炎症ががある場合や、胃酸過多、胆石などの病気をもっている場合などは腸からの抗原の吸収は容易となります。健康な状態では食事性のじんましんにならないのに、体調が悪い、胃腸の具合が悪いなどの場合には、同じものを食べてもじんましんを起すことがあります。食べ過ぎ・酒の飲みすぎ・風邪による感染性胃腸炎などの場合で、体にとって異物とみなされる不純物(抗原物質)が吸収されやすくなって蕁麻疹が生じるということになります。ヒスタミンおよび類似物質を多く含む食物は、魚介類、セロリ、ほうれん草、タケノコ、バナナ、チョコレート、チーズ、赤ワイン、食品添加物などです。
薬剤性蕁麻疹。
薬剤によるアレルギーで、じんましんを引き起こす薬剤として、アスピリン、ピリン系の解熱剤、サルファ剤やペニシリンと
いった抗生物質などのほか、血清やワクチン、輸血によっても発症することがあります。じんましん発生の過程としては薬剤そのものよる単純な刺激によって起こる場合、薬剤がアレルギー反応を引き起こす場合、薬剤が体内で代謝物質をつくりそれが刺激となって起こるなどです。
非アレルギー性じんましんを原因によって分類すると次のようなものが挙げられています。
物理性蕁麻疹、コリン性蕁麻疹、心因性蕁麻疹そのほか多種あります。
物理性蕁麻疹は、種々の物理的刺激によって起こるもので機械的、人工的刺激、寒冷、温熱、日光、圧迫、汗、運動などによって引き起こされます。寒冷蕁麻疹、温熱蕁麻疹、日光蕁麻疹などと呼ばれます。冬の乾燥した冷気でじんましんの症状を起こす例は多いようです。
コリン性蕁麻疹は、発汗刺激によるものです。運動、お風呂に入ったり、刺激物を食べたり興奮したときの発汗での刺激によって生じ、体内のコリンという物質との関係からコリン性とよばれます。コリン性蕁麻疹は、痒いというより痛がゆさを訴える人が多く、一過性でですが汗をかくたびに生じるものです。
心因性蕁麻疹は、ストレスが原因によるものがあるが、思い込みや暗示などによって起こるじんましんなどをいいます。特定の食品を食べてじんましんになった学習体験から、その食品を口にすると起こったり、暗示によってその食品だと思い込んでも、じんましんを引き起こすなど心因性の例です。
そのほか、接触じんましん、血管神経性浮腫、皮膚描記症などが分類されています。
じんましんは急に起こった場合、猛烈なかゆみと発疹を伴いますが、氷嚢などで患部を冷やすなどの救急処置でもずいぶん楽になります。症状が落ち着いてきたら様子をみて、そのまま改善するようなら様子を見て大丈夫です。大人のじんましんならこれでもよいでしょうが、寒冷じんましんには逆効果になるなど素人判断は取り返しのつかないことにもなる病気ですから、様子を見ても症状がひかない場合はもちろん、ほかの病気の可能性もあるので皮膚科など病院へ行きましょう。子供のじんましんの対処はさらに注意を要します。
じんましん治療は大別して、じんましんの原因を取り除く方法、じんましんの原因に免疫をつける方法、それに薬物療法です。
じんましん治療は、急性じんましんと慢性じんましんの場合とで違います。さらにじんましんの根本的な治療や予防が必要です。
治療法のはじめは、じんましん症状を引き起こす原因を突き止めなければなりませんが、原因がはっきりするまでは薬の投与です。市販薬や漢方薬の使用は皮膚科など医師の診察に合わせて行う必要があり、素人のじんましん対処法は避けなくてはなりません。
じんましんの原因を取り除く方法は、検査によってじんましんの原因を特定することから始まります。特定できれば原因を排除したり、原因を避けたりするする根本的で合理的な治療となり、原因がはっきりしているだけに効果が高くなります。食品添加物や食品などは避けられるものは避け、ある程度の摂取が日常の食事に不可欠なものについては摂取限度を図るなどの対処をします。
じんましんの原因に対し免疫をつける方法は、じんましんの原因となるものが日常生活の中で排除しきれないものの場合に対処するものです。じんましんの原因となる食品の一部や家庭内の埃などに対して行われ、特定された原因の特定物質のエキスを薄め、継続的に注射し、体を慣らしていく治療です。治療効果に個人差があり、効果が高い場合とそれほどではない場合があります。
じんましん薬物治療は、じんましんの原因となる物質やじんましんを起こす刺激が特定できない場合に用いられるます。
薬は、飲み薬は抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬を使用するのが一般的で、外用剤は、抗ヒスタミン製剤のレスタミン軟膏や、ステロイド外用剤が使用されます。じんましん治療に使用される抗ヒスタミン薬の種類は多く、効果に個人差があるので、いろいろ試すことも必要です。医師によって処方のされ方が異なり、効能は個人差もあり、じんましん発疹の程度や期間により薬の効果も変化します。抗ヒスタミン薬は鎮静作用と眠気の副作用がありますが、副作用は軽く継続して使用していると消えるのが普通です。胃腸障害、食欲不振、嘔吐、下痢、悪心、便秘や、全身倦怠感、抑うつ、脱力などの副作用がみられることもあります。小児では極めて少数ですがけいれんを起こすことがあります。慢性のじんましんに対する治療は、漢方薬が使用されることもあり、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)・酸棗仁湯(さんそうにんとう)・十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)がよく使われます。
じんましんは辛い症状を伴う病気です。じんましんのつらさは、なったものしかわからないもので、食物の回避、室内空気環境維持などに対する周囲の不理解は本人の精神的負担になることもあります。じんましんは大人だけでなく、子供、それも赤ちゃん、乳児から幼児、小児に発症する場合は本人が説明できず、原因の特定に時間がかかることもあります。大人自身だけでなく乳児から小児まで、じんましんの発症を防ぐためには家庭での普段の生活から対応する努力が欠かせません。じんましんの原因がわかるときの治療ははっきりしますが、食事など特定が困難で知らないまま食べたり、触ったりして刺激を受け、何度も出るのことが多いのです。
じんましんの原因は、食事、室内の空気の汚れやダニの存在、衣服、日光、寒さ、熱、お風呂、運動などなど日常のすべてに可能性があるので、根気よく一つ一つ確認しながら、特定できればその原因を回避すればよいのです。じんましんの症状はこうした努力で少なくなったり、出なくなったりする場合もあります。原因がわかっても、その原因が生活する上でどうしても必要なものであれば免疫をつける治療に入るのですが、その前に普段の生活でできることを実行しじんましん症状を抑えられればそれに勝るものはありません。
日常生活で気をつけながらするじんましん発症の予防法を挙げてみました。
じんましんの原因としての食物に対する予防法は、主食なのか嗜好品なのか、アルコールなどの嗜好品が原因なら減らす努力をし、内臓が弱ってアレルゲンの吸収が増えているなら、飲みすぎ、食べ過ぎをやめて便秘、下痢などを起こさないようにします。問題は摂取が必要な主食品目に対してですが、前述したようなヒスタミンが多く含まれる食品を制限しながら見極めてゆきじんましんが出るものについてその量と発症の程度を確認してゆきます。また食品添加物についても同様の対処をします。
じんましんの原因としての衣服に対する予防法は、ゴムの圧迫などで皮膚の同じ部分が長く刺激されてじんましん症状が起こる場合は、ゴムによる圧迫の程度を測ったり、衣類の種類を変えてみたりして反応を確かめます。ショーツ、ブラジャー、コルセット、ストッキングなどのゴムの圧迫を変えたり、下着を替える工夫です。
じんましんの原因としての発汗に対する予防法は、運動や入浴などの制限が必要になります。汗をかくほどの運動はやめ、お風呂も長時間の入浴は避け、お湯の温度調節やシャワーの利用などでコントロールします。刺激物を食べて汗をかくことも注意します。温熱じんましんのように、体が温まるとじんましん症状が出る場合も同様です。皮膚を擦ることも程度を図らなければなりません。
じんましんは普段から体調を崩さないように節制することが重要です。松居一代さんも、お子さんの症状改善のために部屋を清潔に保つことに熱心になったそうです。ストレスを避け、睡眠は規則正しく十分な時間を取るようにします。じんましんは疲労、寝不足、暴飲暴食などで体調を悪くしたときに発症しやすいと心得てください。冬の風邪にも気をつけましょう。
じんましんの治療は時間との勝負で根気が大切です。普段の生活であせらずに治療を続けましょう。